横浜市の都市農業

2015.10.10 UP

8月6日(水)に東京都市大学環境学部が主催する新型市民講座「世界の現状・地元の取り組み~農と食を考える-世界と横浜の都市農業-」が都筑区役所で開催されました。今回の新型市民講座には枝廣先生が登壇されるので、学外ゼミとして3名のゼミ生が出席しました。

新型市民講座は、以下のプログラムで行いました。

  1. ①「世界の農と食の現状は?」:枝廣淳子
  2. ②「横浜市の都市農業」:丸山知志さん(横浜市環境創造局みどりアップ推進部農政推進課)
  3. ③農家見学と意見交換

そのうちの②と③について紹介します。

横浜市の都市農業
丸山知志さん(横浜市環境創造局みどりアップ推進部農政推進課)

横浜市の農業の全体像
  横浜市では、農業が盛んに行われています。ただし、農業人口が多いわけではありません。2010年には横浜市158万世帯のうち、農家の戸数は4202戸(人口367万人のうち、農業就業人口は6,577人)ですので、全体からみると非常に少ないです。でも、農地面積は3,088ヘクタールあり、なんと市域の7.3%を占めています。横浜市は農業が盛んだと言われる原因は、農地面積の割合が大きいからだと思います。

次に農産物についてです。横浜市の農業産出額は約100億円。これは少数の品目を生産するのではなく、さまざまな品目を生産した結果ですが、金額は、神奈川県内で1位、2位を争うほどです。

このうち、野菜生産量は約6万トンで、これは約60~70万人分の生産量に相当します。品目としては、小松菜やホウレンソウ、カリーフラワー、キャベツ、トマトが盛んに生産されています。その中でも、小松菜はトップクラスの生産量を誇っています。

果物生産量は約2,000トンですが、このうち、横浜市で認定された果樹生産者団体の統一ブランドである「浜なし」が1400トンを占めています。 この「浜なし」は、直接販売されるため、ほとんど市場には出ないそうです。こうした直売が行われる農産物直売所は、横浜には概ね1,000か所あります。

市民に緑を提供する農地
  また横浜市の農業は、ただ農畜産物を供給するだけではなく、環境教育・農体験・食育の場、心やすらぐ緑地空間、農業に関する市民の理解の醸成、景観・環境の保全、災害時の防災機能などのさまざまな役割を果たしています。

大都市でありながら、市民生活の身近な場所に農地があり、野菜や果物、花、植木、畜産など、多様な農業が営まれているのです。市民生活の身近な場所で生産された旬の新鮮な農産物を購入し、味わうことができること、そして野菜や果物の収穫を体験したり、四季折々の農景観を楽しむことができることは、横浜の魅力の一つです。この魅力を高め、将来につなげていくことが横浜市の役割であり、そのために「農業の振興」、「担い手の支援」、「農地の利用促進」の3つの取り組みを進めています。

横浜市独自の取り組み
  市民が身近に農を感じる場をつくる取り組みとして、「横浜みどりアップ計画」があります。「横浜みどりアップ計画」とは、景観や生物多様性の保全などの農地が持つ環境面での役割に着目した取り組みで、地産地消や農体験の場の創出など、市民と農の関わりを深める取り組みを推進するものです。

横浜市の農業を推進するために、持続できる都市農業を推進する取り組みとして、「横浜都市農業推進プラン」が平成27年2月3日に策定されました。また、「横浜市の都市農業における地産地消の推進等に関する条例」も制定されています。「横浜都市農業推進プラン」の取り組みには、2つの柱があります。1つめは「、持続できる都市農業を推進すること」です。これは、横浜市で農家を支援していくということです。2つめは、市民が身近に農を感じる場をつくることです。この「横浜みどりアップ計画」に基づいて、「農地が市の中にある」ことを活用していきます。

農地の保全・利用の制度は、国の法律で定められているものや市独自で定めているものなどさまざまです。
まず、国で定められている農業振興地域と農用地区域は、農業の振興が必要な地域を指定し、農業施策を計画的に行うことにより、農業の活性化と農地の保全を進めることを目的としています。市内で47地区、1023ヘクタールが指定されています。

次に、横浜市独自で定めている制度に「農業専用地区」があります。農業専用地区とは、農業のための土地を確保することによって都市農業の定着を図るとともに、緑地空間として都市環境を保全し、総合的、計画的に地域農業の振興を図ることを目的としています。農業専用地区は、農業振興地域、農用地区域と重複している箇所も多くあり、市内で28地区、1,071ヘクタールが指定されています。

また、市街化区域の中に生産緑地法に基づく「生産緑地制度」という制度があり、農地を保全しています。 農業の担い手支援としては、「農業後継者の育成支援」や「機械作業受託組織の育成」などがあります。

直売が盛んな横浜市の農業
  農業の振興施策としては、横浜ブランドの「はま菜ちゃん」があります。横浜で主に採れる野菜と果物を「はま菜ちゃん」に指定し、横浜ブランドとして推進しています。現在、「はま菜ちゃん」に指定されているのは、野菜26品目、果物4品目の合計30品目です。

また、地産地消の取り組みとして、「地産地消にふれる機会の拡大」、「地産地消を広げる人材の育成」、「市民や企業等との連携」を行っています。横浜市は市街化区域の中に市街化調整区域がモザイク状に入り込んでいることで、住宅(消費者)の近くに農地(生産地)があるために、直売が盛んです。旬のとれたての農産物を販売していること、消費者のニーズに対応した品揃えを行っていること、また売り手と買い手がコミュニケーションをとることができる=つまり売り手と買い手が「顔の見える状態」=ので、リピート率も高いそうです。

また、最近はスーパーにも地場産の作物を扱っているところがあります。スーパーと契約して直接やり取りしているので、直売に近いかたちということができます。横浜といえば、「みなとみらい」が有名です。「みなとみらい」には、ほとんど農地はありませんが、消費者はたくさんいるので、「みなとみらい農家市場」(毎月第4日曜日)を開催しています。朝から長い列を作るほど人気だそうです。地産池消の推進を行政だけでなく、リードする市民を育成する、「はまふぅどコンシェルジュ講座」もあります。

そのほかにも、農業をビジネスとして、観光業と農業を合わせた「アグリツーリズム」や、横浜野菜を使った商品開発も行われています。また、山崎製パンの「ランチパック」でも横浜の農作物を用いた商品化が行われています(2015年9月1日から約2ヶ月間、新商品が販売されています)。毎年11月には、大根、白菜、キャベツなどの市内農産物が約350校の学校給食に供給されたり、神奈川新聞との協力で横浜の地産池消ガイドブック「食べる、横浜」を書店で販売するといった取り組みも行われています。

農家見学と意見交換
  講演の後、都筑区折本農業専用地区を見学させていただきました。農業専用地区については、横浜市独自の制度ということを講演で勉強してから見学に行ったのですが、実際に行くと、区画整備がきちんとなされ、道路も広く水の設備も整っていました。こうした整備は市が負担しています。

たとえば、横浜市でトップクラスの生産量の小松菜は、年に同じ場所で5、6回生産することができ、真夏でも収穫が可能です。地下水を使った水の設備も整っているので、今年のような猛暑でも種の植え付けができたそうです。

お話を伺った農家の加藤さんは50品目の農作物を生産しているそうです。たい肥について、以前は家畜の糞を中心に作ったたい肥に古畳の稲わらを混ぜていたそうです。でも、畳の稲わらに防腐剤や有害物質が含まるようになったため、家庭の生ごみから作ったたい肥を使用しているそうです。量としては、年間平均10アールあたり約1~2トンのたい肥をつくっているとのことでした。

植え付け後の被覆材も季節によって工夫をしているそうです。8月は気温が高いので、風通しの良い被覆材を使用しているのに対し、秋から冬場にかけては防虫だけでなく、保温性のある被覆材を使用していることなどを教えていただきました。

参加者からの「以前と比べて、農業をしていて変わったことは何ですか?」という質問に対しては「以前は主に市場に出荷していたけれど、最近では直売所などで売ることが増えてきた」と答えていらっしゃいました。朝市や直売所は消費者と直接やり取りをするので、消費者のニーズなどがわかるそうです。それに比べると、大手量販店に出荷する場合は、生産者の立場が低く、不利な点もあるとのことでした。

「日本は自給率が低いけれども、自給率をあげるにはどうしたらいいと思いますか?」という質問に対しては、「日本の農業行政は、国内生産を増やすことを理想に掲げているけれども、実際の政策は自給率を下げるものだ。第一次産業を疎かにしてきたツケが、自給率の低下につながっている」とのことでした。また、ガソリンなどの価格が高騰すると、採算が合わなくなる可能性についても質問が出ました。資材やガソリンなどの経費は年々増加しているにも関わらず、野菜の値段は50年前とあまり変わっていません。

最後の「農薬などが残留した作物を食べてもすぐに身体に影響はしない。健康作りの一端も農家が担えると思っている。安ければいいという消費者もいるが、見た目の商品価値よりも、安全・安心な、どこで作られたのかがはっきりとわかる野菜を食べることで健康にもつながる」という言葉が印象的でした。

こちらのジャパン・フォー・サステナビリティのサイトにも記事があります。「市民に緑地を!―神奈川県横浜市の都市農」こちらには英語翻訳されたものもあります。

1期生 徳田美涼
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