地方が消滅するメカニズム--『地方消滅 東京一極集中が招く人口急減』(著:増田寛也)より

松澤和輝   2016.1.10 UP

概要

本レポートでは、地方消滅のメカニズムを増田寛也編著、「地方消滅 東京一極集中が招く人口急減」という書籍から3つの章で明らかにしていく。
第1章では日本の人口動態について、第2章では人口減少の3つのプロセス、第3章では、地方が消滅へと向かう2つのプロセスをまとめていく。

目次

序章

多くの地方が「地方消滅」を食い止めるために様々な地方創生事業が昔から行われている。
 「地方が消滅する」というのはどういうことなのだろうか。どのようにして消滅していくのか。その疑問を解消するために『地方消滅 東京一極集中が招く人口急減』(著:増田寛也)という書籍からこの疑問に対する答えを明らかにしていく。この「地方消滅論」は日本に多くの波紋を広げ、地方創生を語る際には外せない本である。
  本レポートでは、地方消滅のメカニズムを3つの章で明らかにしていく。
第1章では日本の人口動態について、第2章では人口減少の3つのプロセス、第3章では、地方が消滅へと向かう2つのプロセスをまとめていく。

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第1章   日本の人口動態

地方消滅のメカニズムについて考える前に、日本の人口がどのように変化してきたのかを知る必要がある。
  日本の人口は、2010年(1億2806万人)をピークに人口減少に転じ、2050年には9708万人となり、2100年には4959万人となると予想されている。つまり、この100年足らずで現在の40%も減少すると予想されている。(国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」(平成24年1月推計))

グラフ1

グラフ1   出生中位・高位・低位(死亡中位)推計
  出典) 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」平成24年1月

「出生率」と「出生数」の関係は通常、出生率が上がれば出生数が上がる。しかし日本では、出生率が上がっても出生数が上がらない。
  日本の合計特殊出生率は、第一次ベビーブームの時、4.32だった。しかし、その後は、低下していく。2005年には過去最低の1.26となった。その後は反転し、上昇しているものの、出生数は減少傾向にある。通常であれば、出生率の上昇は、20代、30代といった若い年代の出産の増加が寄与しているものである。それであれば、出生数も増加していき人口減少は収まりつつあるといえるのだが、この上昇の背景には、35~45歳の女性の出産数増加が寄与している。第二次ベビーブーム世代より下の世代の人数が急速に減少している。そのため、出生率が上がっても出生数は上がらず人口減少はさらに進むのである。

グラフ2

グラフ2   平成23年人口動態統計月報年計(概数)の概況:結果の概要
  (出典:厚生労働省,「平成23年人口動態統計月報年計(概数)の概況:結果の概要」

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第2章   人口減少の3つのプロセス

2010年以降2090年まで14歳以下の「年少人口」や15~64歳の「生産年齢人口」は減少しつづける。これに対して、65歳以上の「老年人口」は2040年までは増加し、その後横ばい・微減となり、2060年以降減少していく。その結果、総人口は2040年頃まではある程度の減少にとどまるが、それ以降は急速に減少する。つまりこのような3つの段階で分けることができる。(グラフ4)
第1段階 2040年までの「老年人口増加、生産・年少人口減少」。
第2段階 2040年から2060年までの「老年人口維持・微減、生産・年少人口減少」。
第3段階 2060年以降の「老年人口減少、生産・年少人口減少」
  この予測は日本全体を示していることを配慮しなければならない。地域別にみると、すでに第2段階に差しかかっている地域や、すでに第三段階にまで差し掛かっている地域もある。
  なぜ地域によって格差があるのか。その大きな原因が「人口移動」である。
戦後、日本では3度地方から都市部への人口移動があった。一度目は、1960~1970年代前半の高度成長期。その後、安定成長期に入り工場が3大都市圏から地方へ分散し、UターンやJターンがおき人口の地域間格差は縮小する。
第2期はバブル経済期を含む時期である。しかしバブル崩壊後都市から地方への人口回帰がおきた。
第3期は2000年以降の円高不況や公共事業の減少、人口の減少に伴う景気の冷え込みにより、地方の経済や雇用状況が悪化した。そのため地方から都市への流入が発生した。 第1期、第2期は雇用吸収力の増大に由来するものであるのに対し、現在の第3期は地方の経済、雇用の低迷に由来するものとなっている。第3期は、都市部に雇用が必ずしもあるわけではなく、地方に仕事がないため流出せざる負えない状態となっている。これは、地方の経済基盤が崩壊し始めていることを示している。
  若者が大都市圏に流入することが人口減少に拍車をかけたと述べられている。人口移動するだけであれば、総人口に大きな影響を与えることはない。しかし、人口が流入した大都市圏は子供を産み育てる環境として必ずしも望ましいものではなかった。結婚しづらい環境、家族・親戚からの支援が得にくい隣近所のつながりも薄いなどの原因で晩婚化、晩産化、出生率の低下を招いた。

グラフ3

グラフ4   人口減少3つのプロセス

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第3章   地方消滅へ

地方はどのようにして消滅していくのだろうか。実際消滅に至るプロセスは明らかになっていない。『地方消滅』では人口の再生産力に着目している。再生産性を持つ若い年代の女性が減少し続ける限りは再生産性も減少し、人口減少は止まらない。
  さらに、減少スピードについて2つのモデルを示している。

1つ目のケースとして、20~39歳までの女性がほとんど流出しない場合。現在の出生率1.43が続くと仮定すると、2040年には7割減少する。人口を維持するには2.0程度まで上げる必要がある。
  2つ目は、20~39歳の男女3割が流出する場合。2040年には女性の人口は半減し60~70年には2割程度にまで減少する。この場合維持するには2.8~2.9まで上げる必要がある。この2つ目の場合には、流出によるマイナスを上回らない限りどんなに出生率を引き上げても人口減少は止まらない。

国立社会保障・人口問題研究所の推計をベースにすると2040年までに若年女性の人口が5割以上減少する自治体は373ある。

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結論

今回、地方が消滅するメカニズムというテーマでまとめを行った。
第1章では日本の人口動態を見た。そこで、日本の人口は現在下降しており、出生率が上がっても出生数が上がらないという独特な問題を抱えていることが分かった。
第2章では人口減少の3つのプロセスについてみた。2040年までの「老年人口増加、生産・年少人口減少」という第1段階。2040年から2060年までの「老年人口維持・微減、生産・年少人口減少」という第2段階。2060年以降の「老年人口減少、生産・年少人口減少」という第3段階。この3つの減少段階があることが分かった。この3つのプロセスを見ると2040年から人口減少が起きるように見えるがこの数字は日本全体の数値であるため自治体レベルでみるとすでに第3段階に突入している自治体もある。
  第3章では、地方消滅の2つのモデルを見た。どちらのモデルでも2.0以上の出生率が必要としている。
  地方は第2章でみた3つのプロセスを経て消滅へと向かう。それに拍車をかけているのが人口移動(一極集中)である。

このメカニズムは人口という要素から導かれたものである。確かにこの予測は現実に近いかもしれないが、他の要素(新しい考え)が加わることでこの予想と反した結果が出るかもしれない。一つ言えることは、何か手を打たなければ地方どころか日本が消滅してしまうということだろう。

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参考文献

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