子どものこころの力の育て方とはどのようなものか――深谷昌志 監修『元気! しなやか へこたれない 子どもの「こころの力」を育てる――レジリエンス』より

陳野健哉   2016.1.10 UP

概要

「自尊感情」という言葉は学校現場ではとても大切であるが、子どもたちの実際の生活の中では自尊感情を傷つけられる言葉や出来事で満ち溢れているのも事実である。
  いじめや虐待、貧困や家庭不和などの重い問題を背負っている子も少なくない。そんな中でもたくましく生きていく力というのは自尊感情という言葉だけで表現しきれないものがある(深谷ほか2012)。
こころの力の育て方にはさまざまな知識が必要になってくるが、実際には何が重要なのかは分からない。今回のレポートではこころの力の育て方で大切なことは何か、どのようにすればこころの力を育てることが出来るのかということを『元気! しなやか へこたれない 子どもの「こころの力」を育てるレジリエンス』(深谷ほか, 2012)を参考に書いていく。
年齢によってこころの力の育て方が変わっていき、その状況・状態に合わせたこころの力の育て方が重要である。ダメージを受けてずっとそのダメージを受け続けるか、すぐに切り替えて新しい経験を積むかによりかなりの差がある。
小学校低学年と中学年、高学年とでこころの力の育て方のコツや大人がどのように関わるかなど変わってくる。大きくなっていく子ども達のこころにどう接するのかとても大切である。

目次

序論

現在、子どもの生活環境は昔と大きく変わり、ケータイやゲームといった1人で出来る遊びが増えてきた。便利になっていくにつれて、外で遊ぶ時間がとても減ったように感じる。
外で友達と遊ぶことが少なくなっていくにつれて昔よりトラブルが多くなってきており、悪質な内容も多い。不登校や引きこもりといった状態になる子どもが多くなっている。
本レポートは、子どものこころの力の育て方について『元気! しなやか へこたれない 子どもの「こころの力」を育てるレジリエンス』という本の内容を、1章「こころの力とは何か?」、第2章「強いこころを育てるために必要なものは?」、第3章「学年ごとによるこころの育て方はどのようなものか?」の3つに分けてまとめたものである。

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第1章   「こころの力とは何か?」

人には強さがある。人の強さは体力、経済力、精神的・心理的の3つの強さに分けることが出来る。

強い自分であることは大小様々な逆境を乗り越えていくために必要である。

体力、経済力は比較的計量がしやすく分かりやすいが、こころの強さというのは簡単には計量出来ないため、難しい。

こころの力とは何かが起きたとしても自分が自分を守り、早く立ち直る力のことである。
予測できない不運が次々と人を襲う時代を乗り切っていくには、経済力や体力以上に強いこころの力が何より自分を守ってくれる。

こころの力の強さが、いわば大事な自己資産である。強いこころの力をケータイしていればいつどこでも、どんな不運に見舞われても、人は立ち直ることが出来る。 こころの力は、いわば人が一生持ち続けられる確実な自己資産ともいえるし、言葉を変えれば何よりも頼もしい生きる力となる。

だが、人のこころの状態は、常に一定ではない。例えば、朝起きて何となく悲しい日がある。それはこころの力が弱っている日である。困難を切り抜けていくことに自信が無くなっているのはこころの力が弱まっているからである。

また、こころの力、凹んでもすぐに立ち直ることをレジリエンスと表すことが出来る。
この用語や概念が日本に入ってきたのはごく最近である。それまでの日本は、何といっても穏やかな国で、未曾有の災害や不運に見舞われることが少なく、人々の暮らしには安全装置が起動していたかのような状況があり、この概念が発動する余地が無かったからかもしれない。

また、レジリエンスは、家族レジリエンスと個人レジリエンスに分けられる。家族レジリエンスとは、ある家族がストレスに直面したときに、うまく乗り切る現在及び数年にわたる過程であり、家族一人ひとりの個人的特性やその組み合わせ、集団の大きさや構造などによって影響を受けること、すでにレジリエンスが存在するというより、家族が経験した逆境や危機を乗り越えて行く経験によって強化されるものである。

また個人レジリエンスも同様のものと思われる。困難な状況にあっても、ダメージを受ける子どもとそうでない子どもがいる。それは個人の特質にもよるが、頼りになる人との強い絆が有効に働いたこともあるのである。

また、その絆の形成能力にも恐らく個人差があり、絆を結べる相手に出会えるかどうかの「運不運」のようなものにも作用すると考えられる。

レジリエンスの因子の特性は洞察、独立、人間関係、イニシアティブ、創造性、ユーモア、道徳性の7つに整理出来る。

環境上に、個人がダメージを受けやすいリスクファクターがあっても、自分を守る力が子どもの中にあれば、ダメージを受けずに切り抜け、または、いったんダメージを受けても容易に回復していくことが考えられる。

しかし、ダメージを受けて、決定的につまずいてしまうようなレジリエンスの低い子もいる。しかし、一時的に落ち込んでも、やがて立ち直って元気になる、レジリエンスの十分に備わった子がいることは確かであるため、そのような子どもを育てることが大切である。

しかし、人生で遭遇する危機には、あらゆる種類と大きさがあり、それに遭遇するときの個人の状態(心身の健康性、保護してくれる家族や友人、職場、収入、資産その他)によっても、ダメージの受け方や回復力の働きは違ってくる。危機を乗り切った体験などによっても、影響を受けるのである。

レジリエンスは「育てていくもの、経験によって自分で強くしていく資質」と考えるのが適切ではないだろうか。

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第2章   「強いこころを育てるために必要なものは?」

強いこころを育てるために必要なものがある。
まず自尊感情である。自己肯定感と表現する人もいる。自分に欠点があっても、いい部分がたくさんあるから、自分はいい子だと思えるかどうかというのは生きていく上でとても大切なことである。

こころの力が強い子は自分に前向きな姿勢をもっている。自分にはたくさんのいいところがあると思えれば、つらいことや難しい場面に出会っても、自分を信じて、何とか事態を切り抜けようとすることが出来るが、自分はダメだと思っていると力を出すことが出来ない。

また、他人の評価が大きく関わっている。自分の性格は自分で判断するものでなく、他人が判断することで決まっていくようなものなのである。

子どもは親にとって大切な存在であり、親に大事だと思われていると、子どもの自分イメージはどんどん明るいものになってくるのである。

こころの力の強い子を育てるためには、子どもが積極的な自分イメージをもっていられるように、周りでたくさんの元気づける言葉を言うことが大事である。

しかし、世界の子どもたちに調査してみると、日本の子どもの場合、どの調査でも同じように自分イメージが悪いのである。自分は成績が悪い、努力しないなど、「自尊感情の低さ」が日本の子どもの特徴である。

自尊感情が年齢とともに上がっていくなら良いが、次第に下がっていくのだ。
小さい子どもは元気に生き生きと飛び回っている。しかし、そのうち思うようにならないことが増え、失敗や挫折を積み重ねることにより、その度に自分イメージは何でも出来るというイメージからしょっちゅう失敗するというイメージに変わっていってしまう。
そのとき、そばにいる誰かが励ますことにより、自分イメージが良くなっていく。

「こころの力」の強い子に育てるためには、子どもが積極的な「自分イメージ自尊感情」をもっていられるように、周りでたくさんの「元気づける言葉」を言ってあげることが大事である。

また、ガマンする力は「こころの力」の大事な一部であり、人生でとても必要な力である。また勇気も大切である。勇気は子どもの中の育てたいこころの力でもある。人のレジリエンスは、困難を乗り越えた経験を数多く重ねることによって、次第に強くなっていくものである。困難を前にしたとき、勇気を出すか出さないかによって、その人の成功経験の量が違ってくる。子どものこころの力を強くするために、大人は勇気という言葉を意識して使うと良いのである。

勇気とは「こころ」というより「力」である。

小さなつまずきに出会うことはしょっちゅうあり、大きなつまずきも、もちろんあり、そのようなときは誰もが無力感に襲われる。そのときに必要なのが勇気である。[注]

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第3章   「学年ごとによるこころの育て方はどのようなものか?」

学年によって育て方は変わるが、こころの基礎部分は同じである。その基礎部分は元気の中の自尊感情、セルフモニタリング、欲求不満耐性、直接経験の積み重ねがある。

元気はこころの力の基礎体力ともいえる部分である。安定的な家族関係に支えられた自尊感情の高い子は本当に元気である。困ったことが起きても、前向きに解決していこうとするのである。

自尊感情は安定的な人間関係の中にあり、情緒が安定し、自己有能感をもち、自分の存在を根拠なしに肯定できる確信的な自尊心をもつ子は、困難な体験の後の立ち直りも早いのである。

セルフモニタリングは自分をよく知ること、また毎日の生活を振り返ることで、気持ちが整理できる。

欲求不満耐性は欲求不満に耐える力つまり我慢する力である。不登校傾向などで昼夜逆転の生活になっている子がいる。まず、規則正しい生活習慣の確立が重要になる。

直接体験の積み重ねは体を動かすなどといった直接体験のことであり、一つ一つが心の財産となる。

しなやかの中の楽観性、つながる力、コミュニケーション能力、へこたれない中のストレスコーピング、立ち直れる自信と見直し、アイデンティティー、夢や目標がある。

困難をやり過ごすためには、強靭な意志力だけではいかないときもある。楽観性、思考の柔軟性はしなやかと表現できる。

楽観性は「なんとかなるさ」のような楽観性をもつ人のことであり、立ち直りが早いと言われている。

プライドが高すぎたり、完全主義者であったりして他人の助けを求めないでより落ち込んでしまうことがある。仲間の助けを借りて悩みを克服していくためにも大切である。それをつながる力という。

コミュニケーション能力は自分の気持ちを適切に表現したり、友達の話をよく聞いたりすることで、「生きやすさ」に繋がるのである。

へこたれないはレジリエンスそのものでもあるへこたれないことである。落ち込んでも立ち直る力である。

ストレスコーピングはストレスを評価し対処することをストレスコーピングという。ストレスの原因やまわりの状況について合理的な分析が出来たりすると、立ち直りやすくなる。

立ち直れる自信と見直しはつらいことを乗り越えて立ち直ったとき、元の自分より成長すること、これはレジリエンスに直接つながるこころの力と言える。

アイデンティティーは自分の正義の信念があることである。

夢や目標は将来の夢や目標をもって生きるということである。自分や他人の命の大切さを理解するために大事なことである。

低学年の子ども達には毎日名前を呼んでたくさんほめて、いっぱい遊ばせてどんどん元気にすることが大切である。

中学年はケンカをしながら成長していく子どもたちをおおらかに見守りたい。

学級のなかまとの関係の中で自尊感情を高める取り組みが有効である。

高学年は悩みや落ち込みから、だれでもきっと立ち直れること、立ち直った自分はより深く優しくなれることに気付かせることが大事である。

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結論

子どものこころを育てるということは、こころが育っていく小学生の頃にこころを育てるということはすごく大切であり、特に他人からの評価により自分の性格が決まるということは、そこでの評価により今後の人生に影響が出る。

そこでつらいことがあった時に先生の出番ということになる。自分から話すまで待つ、話し出せるような工夫をする必要がある。

優しいだけでなく、勇気を持つということもとても大事であり、勇気を持って行動することによって、成功経験をたくさん積むことで自分に自信を持て、新たな自分に会えることが出来る。

小さい頃にはたくさんの経験をいっぱいしておくこと、自分を愛してくれる人を見つけること、相談が出来る人を探すということを行うことでこころを強く育てることが出来ると考える。

子どもたちに様々な生の体験を積ませると同時に、友だちと触れ合う機会を増やし、一人一人の子どもに自信をもたせることが大事になっていく。

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[文献]

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