配属志望学生へ
◯事例研究について
1,基本的なスタンス
台風や集中豪雨等の極端な現象による自然災害の増大、農業生産への悪・好影響などのように、気候変動リスクとその影響は今後ますます深刻化する可能性があります。したがって、その根本原因である温室効果ガスの排出を抑制する方策(緩和策)と、すでに現れつつある気候変動影響に効果的に対処する方策(適応策)とを併せて講じることによって、レジリエントで持続可能な社会を実現していく必要があります。ただし、緩和策として風力発電や地熱発電といった再生可能エネルギーを急速に大量導入しようとすると、例えば生態系や景観、地域資源の配分問題が起きるなど、様々な利害対立が起こる場合も少なからずあります.このように一見すると環境に優しいはずの営為が別の環境問題を引き起こすとき、いかにして問題解決を図るのでしょうか? 当研究室ではそのような問いへの答えをみつけるべく、専門家や行政、利害関係者らとともに政策イノベーションが起こる仕組みや、合意の場づくり、人々の態度行動変容の分析を行い、政策提言を行っていきます。
2,目標
当研究室では、事例研究や卒業研究への取り組みを通じて、特に以下の3つの能力の習得を目指します。
●課題把握能力
何が解決すべき課題なのか自ら問いを立てることができる
●問題解決能力
その問題を解決するために何をどうすれば良いのか構想することができる
●コミュニケーション能力
自分自身で考えたことを効果的に主張し、相手を納得させることができる。また相手の主張をよく聞いて、的確に質問することができる。
3,進め方
●基礎力の養成1
卒業研究のテーマ発掘(各自で関心のあるテーマの文献、過去の卒業研究などを読み、まとめて発表)
●外部への挑戦
インターンシップ、TOEICや資格試験等の受験、ゼミ合宿(現地調査)など
●基礎力の養成2
アンケート調査設計、統計データ分析、フィールドワーク等の調査分析手法の習得(各自やグループで問題の解き方についてまとめて発表、或いは試行的実践)
●研究テーマの絞り込み
卒業研究計画の作成・修正・提出(事例研究としての最終成果(卒業研究への入り口)を発表会にて発表のうえ討論)
4,学生への期待
当研究室では、気候変動政策を中心としつつも様々な環境政策、エネルギー政策上の問題について、その特性に応じた様々な手法で解決策を検討します。また、国内外の機関との共同研究の機会も学会での企画セッションの機会も数多くあります。非常に多様なテーマと手法の研究を行うメンバーが議論を行いますので、幅広い好奇心をもち、機会を積極的に活用したいと考える主体性のある学生を歓迎します(英語力も重要です)。
◯卒業研究について
1,方針
卒業研究は、大学生活を締めくくる重要な最終成果であるとの認識のもと、先に示した当研究室の3つの目標(課題把握能力、問題解決能力、コミュニケーション力)に鑑み、論文に至る過程の研究活動と、論文そのものについて以下の点を重視します。
●研究活動
ゼミでのレジュメ、発表状況(特に自身と他者への質疑応答)、指導教員が出した課題への対応状況、研究室メンバーとの情報共有など
●研究論文
信頼性(文献サーベイや調査方法は問題ないか)、論理性(仮説や論拠は十分か)、新規性(オリジナリティはあるか)や有用性(どのように役立ちそうか)、文章や図表の表現力など
2,進め方
●仮説構築とデータ収集
研究テーマを決めて本格的な先行研究のサーベイ、仮説構築、データ収集、フィールドワークなどを行う(毎週のゼミで進捗報告と議論)
●外部への挑戦
就職活動,TOEICや資格試験等の受験,ゼミ合宿(現地調査)など
●中間的な分析と中間発表
可能な限り収集したデータの中間的分析を行い,中間発表に臨む
●卒業研究論文の作成と最終発表
分析結果をまとめ、考察し、論文を作成し、最終発表会に臨む
3,研究テーマ例
以下はあくまでも例であり、実際には指導教員と相談しながら皆さんが主体的に決めます。
●環境・技術リスクを巡る合意形成手法の開発と適用
→気候変動問題等を巡るステークホルダー分析
→気候変動問題等を対象とする交渉シミュレーションの開発
●環境・エネルギー政策過程における社会的意思決定に係る分析
→議事録分析に基づく政策過程における対立・協調構造・社会ネットワークの分析
●環境・エネルギー政策イノベーションの分析
→地方自治体の先駆的な政策の実効性や自治体間の波及性のトレードオフ分析
→地方自治体の政策イノベーションの発生メカニズム分析
●市民の環境配慮行動・環境評価の分析
→環境・エネルギー技術の導入を契機とした市民の環境配慮行動の発生メカニズム分析
→市民の再生可能エネルギー等への環境価値の分析
4,学生への期待
卒業研究のテーマは、「・・・でなければならない」といったように大上段に構えることなく、生活発想からである方が長続きします。つまり、最初は素朴な疑問から始まり、テーマを育て仮説を鍛えていくことが必要です。そのためには、指導教員やメンバーとの日々の議論は不可欠です。研究室でのそのような苦楽は社会人になっても大いに役立つでしょう。自ら問いを立て、メンバーと議論し、合理的に解を導く生活を楽しめる自身を培うよう心掛けて下さい。
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