2000年 研究論文

西川竜二・宿谷昌則:樹木の日射遮蔽効果の簡易推定法の開発、日本建築学会計画系論文集、No.527、2000年1月、pp.29-35。

樹木(単木)の日射遮蔽効果を推定する方法について述べたものである。まず、植栽として一般的な樹種を対象に、樹影内外の日射量を実測し、その結果を整理して、緑陰での時々刻々の全日射量の推定方法を導いた。推定方法の応用として、外壁面上の任意の受照点に対する植栽の日射遮蔽効果が簡易に予測できるような、設計ツールとしての図表を作成した。

 

M. Shukuya, "Design with Natural Potentials", Sustainable Architecture in Japan, Wiley-Academy, 2000, pp.140-144.

自然のポテンシャルを利用するデザインとは何をどうすることかを議論したものである。まず、自然の構造・機能についておおまかに概説したのちに、様々な建築環境システムを熱力学的モデルとして記述する方法を説明した。このことによって、様々なパッシブデザイン手法が、地球環境システムと整合性のあるシステムとして働くことを示した。建築環境システムのデザインでは、物質循環を視野に入れることも大切であることをコメントした。

 

高橋達・斉藤雅也・蟻川洋祐・杉岡弘朗・松岡弘幸・宿谷昌則:夏季における住まい手の熱環境調整の行動と温冷感に関する視察調査、日本建築学会計画系論文集、2000年5月、pp.37-43。

 この論文は、ビデオカメラを用いて、実際的な夏季室内環境条件における人の行動と温冷感について観察記録した結果を述べたものである。観察の対象にしたのは、通風、扇風機、エアコン、着衣などの違いによって人の行動が温冷感とともにどのように異なるかである。パッシブ手法による室内環境では、人の行動はアクティプになり、その逆にアクティブ手法による室内環境では、人の行動はパッシブになることがわかった。

 

R. Nishikawa, M. Aratake, M. Shukuya and K. Iwamura, "Micro-climatic characteristics of the outdoor space formed by a block of flats designed with Environmentally-Symbiotic- Housing Concept", Proceedings of PLEA 2000, pp.423-424.

世田谷区の深沢に建設された環境共生住宅の周囲環境に形成される微気候を、実測により調査した結果を述べたものである。この住宅は、屋上が緑化されており、また一部の歩道が透水舗装されている。これらのことにより、蒸発が促進され、夏季の暑熱日に、この住宅周囲は、一般道路や他住宅周囲よりも1〜3℃低くなることを確認した。

 

I. Takahashi, M. Saito, H. Matsuoka, Y. Arikawa, H. Sugioka, and M. Shukuya, "Difference in thermal sensation and behavioral pattern of occupants between passive and active cooling strategies", Proceedings of PLEA 2000, pp.593-598.

この論文は、ビデオカメラを用いて、実際的な夏季室内環境条件における人の行動と温冷感について観察記録した結果を述べたものである。観察の対象にしたのは、通風、扇風機、エアコン、着衣などの違いによって人の行動が温冷感とともにどのように異なるかである。パッシブ手法による室内環境では、人の行動はアクティブになり、その逆にアクティブ手法による室内環境では、人の行動はパッシブになることがわかった。

 

M. Saito, A. Hojo, T. Kozuka, and M. Shukuya, "Investigation of the characteristics of the outdoor air movement providing with 'Suzushisa' sensation", Proceedings of PLEA 2000, pp.632-633.

通風や、壁・天井に冷たさがある場合に感じられる夏季の温冷感に「涼しさ」があるが、この論文では、この「涼しさ」が通風されている条件ではどのような気流パターンのもとで感じられるかを議論した。「涼しさ」が感じられる気流のサンプルを採集し、それをフーリエ解析した。得られた結果から正規化した気流を求め、「涼しさ」を与える気流が、急激な気流速度の上昇に引き続く緩やかな気流速度の下降というパターンを持つことを明らかにした。

 

M. Shukuya and T. Morihana, "Variations of daylight and electric light and the associated brightness sensation", Proceedings of PLEA 2000, pp.644-645.

人が暴露される昼光照度のレベルはかなり大きく変化する。変化の原因は、天気の変化とともに人の行動による。この論文では、顔面に入射する照度と明るさ感がどのような関係にあるかを、被験者を用いた実測により求めたものである。人は、70〜100 lx といった低照度に曝された後には、200〜300 lx でも充分な明るさ感が得られることを明らかにした。この事実は、廊下と執務スペースとで照度を上手に組み合わせることが重要であることを意味している。

 

斉藤雅也・宿谷昌則・篠原利光:人体のエクセルギー収支と温冷感、日本建築学会計画系論文集、2000年9月、pp.17-23。

体感温度(有効温度SET*)を求めるために開発された人体のエネルギー収支式を改変するとともに、改変したエネルギー収支式に対応するエントロピー収支式を導き出した。これらエネルギー・エントロピー収支式をまとめることで、エクセルギー収支式を求めた。空気温度と放射温度が等しいような仮想空間について、エクセルギー収支を具体的に計算してみたところ、温冷感が中立になるところで人体のエクセルギー消費が小さくなることを明らかにした。

 

宿谷昌則:自然共生建築とその形態にかんする考察、日本建築学会大会学術講演梗概集、2000年9月、pp.483-484。

自然共生建築とは何かを明らかにするためには、その生物学的な視点からの考察が不可欠との観点にたち、ヒトの身体に見られる形態学的な特徴を概観するとともに、ヒトの身体を包含するもっとも基本的な環境空間としての建築環境とそのシステムに形態学的な特徴を見いだすための考察を行なった。

 

伊澤康一・高橋達・宿谷昌則:熱交換器を出入りする温・冷エクセルギーとその消費、日本建築学会大会学術講演梗概集、2000年9月、pp.485-486。

熱交換器におけるエクセルギー収支の計算方法を整理するとともに、「温エクセルギー」や「冷エクセルギー」の出入りと熱交換器内でのエクセルギー消費が、出入りする物質の温度と環境温度との関係によってどう変化するかを述べたものである。

 

高橋達・近藤大翼・伊澤康一・宿谷昌則:放射エクセルギーの計算方法、日本建築学会大会学術講演梗概集、2000年9月、pp.487-488。

冷エクセルギーと温エクセルギーの概念を放射熱伝達の現象に拡張展開することによって、例えば、放射冷却パネルなどの低温の面からは「冷やす能力」である冷放射エクセルギーが電磁波として放出されることを理論的に導いた。具体的な計算例も示し、例えば、表面温度が10℃のパネルは、環境温度が20℃である場合、1W/m2 程度の冷放射エクセルギーを出すことを示した。

 

近藤大翼・小溝隆裕・伊澤康一・湯沢映子・高橋達・宿谷昌則:住宅の放射冷房に関する実測とエクセルギー解析、日本建築学会大会学術講演梗概集、2000年9月、pp.489-490。

放射冷房を行なっている住宅居間空間の温熱環境を実測し、実測結果に基づいて放射エクセルギーの計算を行なった結果を述べた。居間空間の中央部にあると仮想した微小立方体に入射する放射エクセルギーを求めたところ、外気温30℃の条件で、放射パネルから371 mW/m2 程度の冷放射エクセルギーが微小立方体の一面に入射することなどを明らかにした。

 

森一顕・荒嶽慎・斉藤雅也・宿谷昌則:建築環境に対する子供の意識形成に関するワークショップによる研究(その1.ワークショップの方法とその結果)、日本建築学会大会学術講演梗概集、2000年9月、pp.491-492。

建築環境に対する意識が未だ充分には形成されていないと考えられる小学生年代を対象にして、暖房機器や照明機器を使用せずに「あたたかく、あかるい家を作ろう」をテーマとしたワークショップを行なった。この報告では、実験者たちが子どもたちとの遊びの中で読み取った環境にかかわる言動について考察を行なった。     

 

荒嶽慎・森一顕・斉藤雅也・宿谷昌則:建築環境に対する子供の意識形成に関するワークショップによる研究(その2.意識形成に関する考察)、日本建築学会大会学術講演梗概集、2000年9月、pp.493-494。

小学生年代を対象にして行なった、暖房機器や照明機器を使用せずに「あたたかく、あかるい家を作ろう」をテーマとしたワークショップの結果に基づいて、意識形成のプロセスについて考察を行なった。子どもたちは、環境を的確に捉え、それを知っている言葉で表現する能力を持っていること、建築環境に関する想像を発展させることができること、建築環境に対する意識は、楽しさの中で形成されやすいことを示した。

 

松岡弘幸・斉藤雅也・宿谷昌則:夏季の住まい方が住まい手の心理と生理に与える影響に関する研究(その1.快適と想像する温度と実際の温冷感)、日本建築学会大会学術講演梗概集、2000年9月、pp.497-498。

夏季に日常的に冷房を行なうか、あるいは通風で過ごすかの違いが、個々人の熱環境に対する意識や温冷感にどのような影響を与えているかを明らかにするために、アンケートによる実態調査と被験者実験を行なった。その結果、冷房をよく使う人は、通風で過ごす人に比べ、家庭でのクーラーの設定温度や夏季に快適と想像する温度が低いことが明らかになった。

 

斉藤雅也・松岡弘幸・宿谷昌則:夏季の住まい方が住まい手の心理と生理に与える影響に関する研究(その2.体温調節と水摂取)、日本建築学会大会学術講演梗概集、2000年9月、pp.499-500。

夏季の住まい方が個々人の熱環境に対する意識や温冷感にどのような影響を与えているかを明らかにするためのアンケートによる実態調査と被験者実験の結果を考察した。冷房をよく行なう人の体温は通風で過ごす人の体温よりも高めになっていること、通風室と冷房室とで水の摂取の仕方が冷房をよく行なっている人の場合に著しく変化することなどが明らかになった。

 

山口裕照・伊澤康一・斉藤雅也・高橋達・宿谷昌則・岩村和夫:緑化屋根の夏季における熱特性に関する実測と解析、日本建築学会大会学術講演梗概集、2000年9月、pp.501-502。

世田谷区深沢にある「環境共生住宅」の緑化屋根を対象にして、芝生や土壌の夏季における熱の振る舞いについて実測とエクセルギー解析を行なった。緑化屋根は、室内に向かう温エクセルギーを瓦屋根の場合の2/3程度にすること、周囲外気をあまり暖めずに熱を上手に捨てる技術であることが確認できた。

 

田辺俊彦・佐山竜一・斉藤英範・高橋達・宿谷昌則:スレート葺き屋根の二重化と散水による天井表面温度の低下に関する実測、日本建築学会大会学術講演梗概集、2000年9月、pp.507-508。

スレートぶき屋根を取り上げ、一重葺き、二重葺き、二重葺きに散水を行なうという三通りの屋根仕様について日射遮蔽効果を知ることを目標として、天井表面温度がどの程度低下するかについて実測と数値解析によって把握した。天井表面温度は、二重葺きの場合では一重葺きの場合より10℃ほど低くなり、散水を行なった場合は二重葺きより更に約10℃低くなることがわかった。

 

斉藤英範・佐山竜一・田辺俊彦・高橋達・宿谷昌則:スレート葺き屋根の二重化と散水が日射遮蔽効果に与える影響に関するエクセルギー解析、日本建築学会大会学術講演梗概集、2000年9月、pp.509-510。

スレート葺き屋根におけるエクセルギー収支が屋根の二重化や散水によってどのように変化するかを検討した。その結果、二重葺きにすることによって天井から室内側に放出される温エクセルギーが一重葺きの1/20になり、さらに散水を施すことによって天井から冷エクセルギーを放出させることが可能であることを示した。

 

小溝隆裕・伊澤康一・高橋達・宿谷昌則:放射冷房とパッシブ手法の組み合わせによる熱環境の改善に関する数値解析、日本建築学会大会学術講演梗概集、2000年9月、pp.515−516。

外付け日除けや躯体熱容量などのパッシブ型の建築環境調整手法と放射冷房との効果的な組み合わせを見いだすための数値解析を行なった。外付け日除けを設置して、ほどよい大きさの躯体熱容量を設けると、比較的高いパネル表面温度でも適度な体感温度が得られることを示した。

 

竹内亜沙美・宿谷昌則:照明に関わる個人の意識と行動に関する調査、日本建築学会大会学術講演梗概集、2000年9月、pp.495-496。

個々人が育ってきた時代やそれを背景とする家庭環境や学校・職場環境が、照明にかかわる意識や行動の仕方にどのような影響を及ぼしているのかを知ることを目的として調査を行なった。その結果、照明についての個人の意識と行動は、家庭と通学・通勤先とでは一致していないことが確認できた。

 

宿谷昌則:省エネルギー・自然エネルギー利用の考え方とその育成、建設マネジメント技術、2000年9月、pp.48-53。

武蔵工業大学の横浜キャンパスに建設された建物に施された様々な省エネルギー・自然エネルギー手法がどのような考え方に基づいているかを概説するとともに、住まい手に省エネルギー・自然エネルギー利用の考え方を育成していくのに何が重要かを論じた。

 

宿谷昌則:昼光照明という人工照明----「エクセルギー」と「からだ」の視点から----、2000年12月、pp.9-15。

昼光照明を電灯照明などと並列に人工照明の一つと位置づけ、昼光と電灯の基本的性質〈例えば発光効率)を比較した。昼光照明と電灯照明におけるエクセルギー消費を試算した例について解説を行ない、昼光照明のデザインとは、日射エクセルギーの消費パターンを変化させること、電灯照明のエクセルギー消費が著しく大きいことを示した。光環境のデザインは、ヒトのからだに備わった自然にうまく調和したものでなくてはならないことも指摘した。       

 

     
     
     
   

武蔵工業大学 環境情報学部 ・大学院環境情報学研究科 宿谷昌則研究室
 
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