2003年 研究論文

宿谷昌則・田辺新一・太田浩史・高草大次郎:座談会『ゆるやかな変化をデザインする』、シリーズ:環境とデザイン−02、2003年3月号(第78巻3号)、pp.46-54。

建築環境の専門とする田辺新一教授と宿谷、環境をデザインのテーマにしつつある若手の建築家2人(太田浩史・高草大次郎)の4人が、環境デザインとは何かについて約3時間にわたって行なった座談会の記録である。設備とは「設け備えること」、天井高と冷凍機、熱は時間差で現れる、太陽より発熱する人体、断熱新事情、設備の編集力、環境は体験から、「体験」は人をアクティブにする、ゆるい設備、空間のムラを知ろう、エクセルギーで考える、脳は正直に反応している、時間をデザインすること、変動をデザインすること などについて自由な議論が行なわれた。 

宿谷昌則:エクセルギーの考え方−いわゆるエネルギーとは何だろうか−、CEL 64号 大阪ガス エネルギー・文化研究所、2003年3月、pp.3-9。

 エクセルギーとはどんな概念かを一般向けに解説したものである。保存と消費という概念の違いを明確にするために、まずは、エネルギー保存則とエントロピー生成則を概説し、これら二つの概念に環境という概念を加えることで、エクセルギーの概念が導き出されることを簡単な例を挙げて説明した。また、建築環境空間や人のからだ、地球環境空間がエクセルギーの投入・消費とエントロピーの生成・排出のプロセスで成り立っていること、人体のエクセルギー消費を調べると、快適性が高い環境条件でエクセルギー消費が小さいことなどを述べた。 

宿谷昌則:身に染みてわかっていく話、太陽エネルギー、Vol.29No.320035月、p.1  

 太陽エネルギーをはじめとする様々な自然エネルギーをどう認識したらよいのか、また、ハイテク・ローテクと呼ばれて区別されている技術について、それらをどのように活用したらよいのか‥‥などを、雑誌「太陽エネルギー」の巻頭言として述べたものである。 

M. Shukuya, M. Nishiuchi, and M. Tsumura, “Cool Radiant Exergy Available from the Sky – A Low Exergy Source for Low Exergy Cooling Systems - , LOWEX NEWS, IEA-ECBCS-Annex 37: Low Exergy Systems for Heating and Cooling of Buildings, July 2003, pp.2-3. 

 この速報記事は、空からやって来る冷放射エクセルギーについて解説したものである。放射エクセルギーの概念は、実効放射にも適用することが可能で、空からは冷放射エクセルギーが降って来ることを定量的に示すことができる。夏季で湿度が高い場合、1〜2W/uとなる。これは日射エクセルギーに比べると著しく小さいが、室内で涼しさを感じる場合の冷放射エクセルギーに比べると十分に大きい。この冷放射エクセルギーの利用を可能にするには、日射遮蔽(屋外日よけ)、緑化などの技術を上手に組み合わせることの大切さを指摘した。 

直井隆行・若月貴訓・竹内亜沙美・宿谷昌則:後得的明るさ感に関する実験的研究、日本建築学会環境系論文集、2003年7月、No.569、pp.55-60。

 明るさ感には生得性と後得性があるとの仮説を立てて、特に後得性が存在するかどうかを実験によって確かめることを試みたものである。被験者8人の日ごろの暴露照度測定とともに、これら8人に短時間で大きな変化のある光環境、ゆっくりとした変化のある光環境の二つの環境を体験させ、暴露された環境空間における明るさ感、取りたい行動を申告させた。その結果、取りたい行動は、日ごろの光環境の性質との対応関係が強く見られた。これは、明るさ感に後得性があることを示していると考えられる。 

宿谷昌則:ありふれている・当たり前でないもの と こと、給排水設備研究、2003年7月、pp.2-3。

 水という物質がありふれてはいるものの、他の物質一般に比べて極めて特異な性質を持っていることを確認した上で、かたち(構造)・かた(機能)の見方・読み方から、また、微視的・巨視的な視点から、建築環境システムにおける水の役割を概説した。流れ・循環・エネルギー・エントロピー・エクセルギーと水の役割についても概説した。 

伊澤康一・小溝隆裕・宿谷昌則:室内空気温・周壁平均温の組み合わせと人体エクセルギー消費の関係、日本建築学会環境系論文集、No.570、2003年8月、pp.29-35。

 人体のエクセルギー収支式の改良を行なった結果を述べ、次いで改良した式に基づいて人体と建築環境空間との間でやり取りされる温・冷・乾・湿エクセルギーの関係、人体内エクセルギー消費と環境温度の関係を求め考察を行なった。得られた知見として最も重要なことは、湿気に関わるエクセルギーについて、室内環境と屋外環境とを分離して議論ができるようになったこと、また、エクセルギー消費を最小にする冬季における環境条件が明らかになったことである。 

宿谷昌則:照明の成り立ちを考える、照明学会誌、2003年9月、pp.720-724。

 地球環境と照明と題した特集号の総説である。照明は光から熱への流れであることを確認し、それを顕に表現するのにエクセルギー・エントロピー過程の考え方が有用であることを述べた。人工照明が昼光照明と電灯照明の双方から成り立つと考えることが重要であることを指摘し、照明の生理・心理に与える影響についても言及した。特にヒトのサーカディアンリズムと昼光照明の関係、明るさ感の後得性と日常の光環境との関係を指摘した。 

津村真理・西内正人・宿谷昌則:夏季の市街地と緑地における放射エクセルギーの比較(その1.実測概要と天空温度の推定)、日本建築学会大会学術講演梗概集、2003年9月、pp.559-560。

 夏季における市街地と緑地の温熱環境の違いを明らかにするために、特に放射エクセルギーに着目して実測調査を行なった。その実測概要とともに、放射エクセルギーの計算を行なう上で必要となる天空温度の推定値の処理方法について述べた。夏季のよく晴れた日に、赤外線放射カメラの測定値が−20℃の場合の天空温度は7.8℃、−10℃なら10.5℃、5℃なら13.7℃となることが明らかになった。 

西内正人・津村真理・伊澤康一・宿谷昌則:夏季の市街地と緑地の放射エクセルギーによる比較(その2.実測結果と放射エクセルギーの計算)、日本建築学会大会学術講演梗概集、2003年9月、pp.561-562。

 市街地・住宅地・緑地における放射エクセルギーの分布を求め考察を行なった。屋外環境の構成要素と温放射・実効放射・日射エクセルギーの関係を解析した結果、涼しい屋外環境を形成するには、日射エクセルギーを森林で遮り、天頂方向の実効放射をうまく得られるような工夫と植物の計画的な配置が重要であることを示した。 

大西正紘・若月貴訓・高成田恵介・伊澤康一・宿谷昌則:夏季における屋外放射環境の違いが室内熱環境に与える影響に関する実測、日本建築学会大会学術講演梗概集、2003年9月、pp.563-564。

 保全林に面した部屋とレンガ敷中庭に面した部屋の温熱環境の違いを比較実測した結果を述べた。両室の窓面に入射する放射エクセルギーを計算した結果、室内の壁表面温度・空気温度の上昇を促進させる温エクセルギーと、上昇を抑制する冷エクセルギーを定量的に表すことができた。冷エクセルギーを放出できるような屋外環境を整え、それを室内に上手に取り込めるようにすることが重要である。 

若月貴訓・大西正紘・宿谷昌則:ライトシェルフによる昼光照明効果の実測、日本建築学会大会学術講演梗概集、2003年9月、pp.565-566。

 ライトシェルフの計画資料の充実を目標として、ライトシェルフ上部の窓を昼光が入射しないように塞いだ場合と塞がない場合の室内照度を比較実測した結果について述べた。今回の実測に用いたライトシェルフは、室内の机上面照度をある程度大きくすることに寄与していることがわかった。このライトシェルフ窓部のみから得られる机上面照度は、窓側で約500lx、中央で約250lx、廊下側で100lxであった。  

伊澤康一・宿谷昌則:床採温システムのエクセルギー放出・消費特性の試算、日本建築学会大会学術講演梗概集、2003年9月、pp.589-590。

パッシブ手法が適切に施された建築環境空間に相応しい比較的低温な温水を利用する床暖房システムについて検討した。床暖房システムでのエクセルギー消費と断熱材厚・配管深さ・温水温度の関係性を明らかにして、十分な断熱と比較的低い温水温度の組み合わせが快適性向上と省エクセルギーの双方に有効であることや、配管を室内側から1535mmの深さに埋設すると床全体でのエクセルギー消費が小さくなることなどを示した。 

直井隆行・江頭寛基・伊澤康一・宿谷昌則・生島充・石川雅規:〈あたたかさ〉に関する研究とその解析 ―採温 と 採暖 の比較―(その1.実験の概要と室温・MRTの結果)、日本建築学会大会学術講演梗概集、2003年9月、pp.599-600。

 窓や外壁の断熱が不十分な従来仕様のBEM(熱環境体験室:Built-thermal-Environmentalmental Model)と外断熱仕様のBEMを使用し被験者実験を行なった。実験中は2室ともエアコンの設定温度を20℃としたが、断熱性の違いにより2室では異なる温熱環境を形成することが確認された。室内空気温とMRTの違いを考察し、従来仕様室における暖房は「採暖」、外断熱仕様室における暖房を「採温」と位置づけた。 

江頭寛基・直井隆行・伊澤康一・宿谷昌則・生島充・石川雅規:〈あたたかさ〉に関する研究とその解析 ―採温 と 採暖 の比較―(その2.被験者の温冷感と人体エクセルギー消費)、日本建築学会大会学術講演梗概集、2003年9月、pp.601-602。

 本報その1.で、従来仕様室と外断熱仕様室が異なる温熱環境を形成することが確認されたのを受け、従来仕様室と外断熱仕様室の〈あたたかさ〉感の違いを、被験者の温冷感と人体エクセルギー消費に着目して考察した。被験者は「採暖」よりも「採温」によって〈あたたかさ〉を感じ、人体でのエクセルギー消費も「採温」の方が「採暖」に比べて小さくなることが確認された。 

小山洋平・高成田恵介・宿谷昌則:光庭を利用したパッシブ型換気の実測、日本建築学会大会学術講演梗概集、2003年9月、pp.615-616。

 武蔵工業大学横浜キャンパス3号館新棟に設けられた光庭を利用したパッシブ型換気の効果を明らかにするために実測を行なった。この光庭を利用したパッシブ型換気は、主に屋外の風が駆動力となっており、特に屋外の風が2m/s以上の場合に光庭での換気が促進されていることがわかった。また、光庭への散水は光庭内部の風速を少し大きくするのに役立つことが確認できた。  

高成田恵介・宿谷昌則:換気システムのエクセルギー消費プロセスに関する計算方法の開発、日本建築学会大会学術講演梗概集、2003年9月、pp.627-628。

 アクティブ型とパッシブ型の換気システムがどのように働くかを明確にすることを目標に、両者のエクセルギー消費プロセスを計算し考察を行なった。アクティブ型換気システムは、相対的に非常に大きなエクセルギーを消費することが分かった。パッシブ型換気を駆動する風圧力と浮力によるエクセルギーのうち、浮力に伴うエクセルギーがかなり大きいことが明らかになった。 

宿谷昌則:地球環境システムの最単純模型 ―建築環境教育のための教材開発―、日本建築学会大会学術講演梗概集、2003年9月、pp.669-670。

 人が地球環境問題を身近に感じるためには、建築環境と地球環境との繋がりをよく認識することが重要である。そこで、地球環境システムを極めて単純化した模型を作り、学習に利用することを考えた。本報告では、水飲み鳥・プラスチック製容器・コップ・保冷材を用いた模型の紹介と、その物理的な働きをエクセルギー収支の観点から考察を行なった。この模型は、地球環境システムにおける熱の流れと水の循環を示すことができ、また、熱力学の学習にも効果的である。

 

大森栄佳・宿谷昌則:光環境をテーマにした住環境教育の方法に関する研究、日本建築学会大会学術講演梗概集、2003年9月、pp.673-674。

 住環境を構成するひとつの要素である光環境に着目したワークショッププログラムを開発し、大学生6人に対して実施した。その結果を脳の働きと照らし合わせて考察した。脳の働きを考慮すると、ワークショップの各段階において適度な満足と新たな欲求が生じるようなプログラムが効果的であることが分かった。 

渡辺菜穂・隈元孝行・宿谷昌則:自然と人工の視覚情報が快適さのイメージに及ぼす影響(その1.実験概要、自然・人工と快・不快の関係)、日本建築学会大会学術講演梗概集、2003年9月、pp.675-676。

 自然と人工の視覚情報が生得的あるいは後得的な快・不快にどのような影響を与えるかを明らかにするために被験者実験を行ない、考察した。「自然」を含む画像は快適さの得点が増し、「人工の材料」を含む画像は快適さの点数が減る傾向があった。また、「人工の材料」を含んでいる画像でも、「自然」や「自然の材料」が加わると快適さの点数が増した。 

隈元孝行・渡辺菜穂・宿谷昌則:自然と人工の視覚情報が快適さのイメージに及ぼす影響(その2.自然・人工の種類と快・不快、快・不快の理由)、日本建築学会大会学術講演梗概集、2003年9月、pp.677-678。

 本報1.に引き続き、自然・人工の種類と快・不快の関係、快・不快の変化について考察を行なった。また、快・不快の理由として挙げられたことばについて被験者を「都会出身者」「地方出身者」に分類し考察を行なった。快・不快のイメージが結びつくことばは、ヒトが生まれてから生活してきた環境により異なるもの・異ならないものがあることが確認された。前者が「後得的」、後者が「生得的」と考えられる。 

D. Schmidt and M. Shukuya, “New Ways Towards Increased Efficiency in the Utilization of Energy Flows in Buildings”, Research in Building Physics, September 2003, pp.671-681.

 この論文は、建築外皮から暖冷房システム・ボイラー・ヒートポンプ・発電所などまでの全体におけるエクセルギー消費パターンの計算方法について述べたものである。計算事例を通じて、エクセルギー消費を検討する必要が何故あるのか、建築環境内部での人体の温熱快適性との関係がどのようになっているのかなどについて述べた。この論文は、19992003年にかけて行なわれてきた国際エネルギー機関(IEA)の共同研究の結果に基づいている。 

宿谷昌則:建築環境・省エネルギーとかたち・かた、IBEC  No.139200311月、pp.2-4

 建築環境や省エネルギーに対する考え方は様々ある。その考え方が、ものごとの〈かたち〉を見ようとして取りかかる人と、〈かた〉を読もうとして取りかかる人とで、出てくる答えにしばしば相違が生じるのではないかということを指摘した。建築環境や省エネルギーの見方・読み方について、「見る」と「読む」の違いを明確にして考えることの重要性を指摘した。 

宿谷昌則:光から熱への流れと建築外皮、建築画報 特別号 Vol.39 No.304200312月、pp.84-91

 建築外皮のデザインは、建物の表情を決めるだけでなく、建築環境の質をも左右する。この論文は、建築外皮のデザインにおいて、光・熱・湿気・空気の流れをどのようにイメージしたらよいかについて総説したものである。窓は何故あるか、省エネルギーは何をどうすることか、熱の流れの抑制と促進の見方・考え方、熱の空間的・時間的な移動の仕方、光から熱への流れ、熱から湿気への流れ、空気の出入りの捉え方について解説した。 

 

     
     
     
   

武蔵工業大学 環境情報学部 ・大学院環境情報学研究科 宿谷昌則研究室
 
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