2007年 研究論文

◆宿谷昌則:放調のすすめ、ガスエネルギー新聞、 2007年1月31日、p.7。

    「放調」なる語を、「空調」という語を補うのに(実験的に)使ってみてはどうかとの提案を行なった。それは、私たち人の感じる温かさや涼しさが主として空気の温度で決まると思い込んでいる人の数があまりにも多いからである。私たちが感じる温かさ・涼しさは、通常の室内外環境では、空気温のほかに壁や窓・天井などの平均温度に大きく影響される。そのことを身近な事例を取り上げ解説するとともに、身近な環境技術の開発に新たな視点が必要であることを指摘した。

◆M. Shukuya, Exergetic View and Thinking-for the Development of Environment-conscious Technologies, Transactions on Electrical and Electronic Engineering of Japan(IEEJ), 2007, No. 1, pp.8-11.

    いわゆるエネルギー問題と環境問題を如何に捉え、これからの時代に相応しい技術を如何に開発していくかを考えるとき、エクセルギーの見方・考え方が鍵になるとの視点に立って、エクセルギー概念に馴染みのないと思われる読者むけに短い解説を行なった。応用の一事例として蛍光灯のエクセルギー収支を紹介し、人工照明技術のあり方について提言を行なった。

◆宿谷昌則:動かぬ価値とは何だろうか、月刊 不動産流通 談話室、2007年8月、pp.8-9。

    不動産とは「土地・建物・立ち木のように、すぐには動かせない財産」との定義から始めて、建築内外環境や都市環境と不動産との関係を、建築環境学の視点から眺めてみることを試みた。不動産価値というときに何か干からびたイメージが浮かんでしまうのは、建築環境や都市環境の空間を、自然の一部あるいは自然に連なる空間と見ていないからだろうことを指摘した。潤いある建築環境・都市環境を、時間をかけて創出していく。それは動かぬ価値を不動産に与えるに違いない。

◆宿谷昌則:環境と人間、日本建築学会編 建築設計資料集成 [環境]、pp.2-4。

    建築の設計計画の当初に考えておくべき事柄を、特に環境に関する視点から整理した。人間と空間・時間(環境空間と主体の関係/入れ子構造/環境に対する感覚と行動の成立過程)、身近な環境空間とその成り立ち(感覚を育む建築環境空間/建築環境システム)、流れ・循環・リズムのデザイン(流れと循環/建築環境設計の目標)について概説した。

◆宿谷昌則:住まいの環境と住まい手・つくり手の共育、Argus-eye 2007年9月号、pp.10-12。

    環境教育といえば、海や森などの自然を守るための教育を暗に指すことが多いが、一般的な環境教育と住環境教育とを有機的に繋ぎ、また、理科や数学・国語などの教育にも有機的に繋ぐことが必要である。体感から始まるイメージの創出プロセスや理解の深まりのプロセスを重視するために、身近な環境から様々な題材を取り上げて教育を展開する。その可能性を指摘し、それは、自然のポテンシャルを活かす建築の住まい方の学びにも繋がるることを指摘した。

◆岩松俊哉・星野佳子・片岡えり・宿谷昌則:開放空間における採冷手法の可能性に関する実験研究、日本建築学会環境系論文集 第618号、2007年8月、pp.45-52。

    本論文は、放射冷房と自然換気の組み合わせが可能か否かを検討した結果を述べたものである。木造の実験棟2棟を用いて温熱環境の測定とともに被験者実験を行ない、得られた結果についてエクセルギーの視点から考察した。1棟は放射冷房+通風、いま1棟は対流式冷房として実験した。室内で得られる冷エクセルギーは放射冷房+通風のほうが小さめであったが、放射冷房+通風を不快ではないとする被験者数は対流式冷房の場合よりもむしろ多かった。このことは、高めの表面温度による放射冷房が、通風との組み合わせによって可能になることを示している。

◆片岡えり・岩松俊哉・掛上恭・山田浩嗣・宿谷昌則:住宅における冷放射エクセルギー供給のためのヒートポンプシステムに関する検討、日本建築学会大会学術講演梗概集、2007年8月、pp.601-602。

    高温冷水を流して放射冷房を行なう場合のヒートポンプシステムにおけるエクセルギー消費と温・冷エクセルギーの出力について、比較的高めの設定温度で対流式冷房を運転した場合のエクセルギー消費などと比較して検討した。その結果、小さな冷エクセルギーを継続的につくれるような小型のヒートポンプシステムを構築する必要であることを明らかにした。

◆藤井廣男・片岡えり・宿谷昌則:教室空間の温熱環境調整における自然のポテンシャル活用可能性の検討、日本建築学会大会学術講演梗概集、2007年8月、pp.541-542。

    横浜市にある小学校 教室空間の夏季における温熱環境を実測するとともに、その結果を踏まえた日射遮蔽や通風、壁体断熱改修の効果に関するシミュレーションを行ない、その効果をエクセルギー概念によって定量化した。夏については日射遮蔽のほかに照明発熱の削減が重要であり、照明発熱を半減させたとすると、温エクセルギーが現状で冷房を行なった場合の半分までになり、冷エクセルギーの出力が期待できるようになることを示した。冬については断熱による壁内表面温度の上昇によって、周壁面から十分な量の温エクセルギーが得られるようになることを示した。

◆牧容子・宮崎賢一・宿谷昌則:光と熱の放射環境と明るさ感・温熱感の比較研究−その1.実験概要と物理量の測定結果、日本建築学会大会学術講演梗概集、2007年8月、pp.507-508。

    読み書き作業を行なう空間を想定して、雰囲気照明や明視照明の光源・方式について、光源からの可視光や放射熱が室内環境にどのような影響を及ぼすかを物理量測定と被験者実験をもとに明らかにした。物理量と明るさ感・温熱感の対応関係を整理して、視的快適性と温熱的快適性の双方が満足されるような室内環境とは何かを見出すことを試みた。本報その1.では、実験の方法と物理量の測定結果を述べた。

◆宮崎賢一・牧容子・宿谷昌則:光と熱の放射環境と明るさ感・温熱感の比較研究−その2.被験者実験の結果、日本建築学会大会学術講演梗概集、2007年8月、pp.509-510。

    読み書き作業を行なう空間を想定して、雰囲気照明や明視照明の光源・方式について、光環境物理量と明るさ感・温熱感の対応関係を整理して、視的快適性と温熱的快適性の双方が満足されるような室内環境とは何かを見出すことを試みた。本報その2.では、被験者実験の結果を述べた。照明ランプ・器具から発せられる放射熱が室内の空気温度や周壁面の温度を上昇させていることを確認し、また、明るさ感が丁度よくても、電灯照明が温熱的な不快感を与えることや、昼光照明だけの空間や比較的低い照度の空間でも被験者は不快ではないことを示した。

◆三戸部元洋・深井友樹・井澤健輔・淺田秀男・岩松俊哉・福田秀朗・大熊武・宿谷昌則:高温放射冷房と低温放射暖房における快適性に関する実験研究−その1.実験概要、日本建築学会大会学術講演梗概集、2007年8月、pp.581-582。

    本報その1.では、冷放射による採冷方法を施した室内環境の物理量を把握するとともに被験者申告や履歴との対応関係を明らかにするために行なった実験の概要を述べた。実験は、2005年の夏に つくば市 にある二つの実験棟を用いて、一方に対流式エアコン、他方に天井面を冷却する放射冷房(ラジコン)を施して行なった。エアコンと扇風機の組み合わせに対して、ラジコンのほうは窓を閉鎖・開放のいずれかとの組み合わせとした。被験者には、エアコン棟とラジコン棟のそれぞれに1時間ずつ滞在してもらった。快適さについての申告は、風を感じると思うか否かとの組み合わせで答えてもらうこととし、データロガーに接続したダイヤルで行なってもらった。

◆深井友樹・三戸部元洋・井澤健輔・淺田秀男・岩松俊哉・福田秀朗・大熊武・宿谷昌則:高温放射冷房と低温放射暖房における快適性に関する実験研究−その2.夏季実験結果・考察、日本建築学会大会学術講演梗概集、2007年8月、pp.583-584。

    本報その2.では、実験期間中の環境物理量を整理した結果を述べた。エアコン棟の窓面には室内側日除け(カーテン)、ラジコン棟の窓面には室外側日除けを設けた結果、後者は前者に比べて日射取得量が約1/3になった。エアコン棟は室内空気温の方が周壁平均温度(MRT)よりわずかに低め、ラジコン棟はその逆の傾向になった。室内の相対湿度は、エアコン棟のほうが60〜80%、ラジコン棟のほうが50〜90%にあって、後者のほうが高めであることが多かった。室内の上下方向の空気温度分布は、エアコン棟とラジコン棟ではまったく異なり、前者は天井・床面より低め、後者ではその逆に天井・床面より高めとなった。快適申告は、エアコン棟で約50%、ラジコン棟(通風あり)で約75%であった。

◆井澤健輔・三戸部元洋・深井友樹・淺田秀男・岩松俊哉・福田秀朗・大熊武・宿谷昌則:高温放射冷房と低温放射暖房における快適性に関する実験研究−その3.冬季実験における環境物理量と快適申告、日本建築学会大会学術講演梗概集、2007年8月、pp.585-586。

    本報その3.では、この実験に参加してもらった被験者の属性としてエアコンの好き・嫌いを取り上げ、それらと実験棟在室時の環境物理量・快適さ申告の関係を整理した結果を述べた。快適申告割合は、周壁平均温度(MRT)が高くなるにつれて、また相対湿度が高くなるにつれて低くなる傾向があった。同様の関係を室内空気温度について調べたが、関係はあまりハッキリしなかった。また、MRTと快適申告割合の関係は、エアコンの好き・嫌いで顕著な違いが見られた。エアコン好きの被験者は、低めのMRT・相対湿度でないと快適さが得られにくいことがわかった。

◆淺田秀男・井澤健輔・三戸部元洋・深井友樹・岩松俊哉・福田秀朗・大熊武・宿谷昌則:高温放射冷房と低温放射暖房における快適性に関する実験研究−その4.暖房時の人体エクセルギー収支と快適性に関する考察、日本建築学会大会学術講演梗概集、2007年8月、pp.587-588。

    本報その4.では、環境物理量の測定結果にもとづいて、エアコン棟・ラジコン棟それぞれの周壁面から出る放射エクセルギーの経時変化や、放射・対流エクセルギーの出入りの様子を計算した結果を示した。エアコン棟から出る「冷」放射エクセルギーは、ラジコン棟に比べてかなり小さいことがわかった。また、窓面から室内空間に向けて出る放射エクセルギーはエアコン棟では「温」であるのに対して、ラジコン棟では「冷」であることがわかった。これは、ラジコン棟における窓ガラス外側の日除けの効果である。

◆岩松俊哉・三戸部元洋・深井友樹・井澤健輔・淺田秀男・福田秀朗・大熊武・宿谷昌則:高温放射冷房と低温放射暖房における快適性に関する実験研究−その5.冷房時における人体エクセルギー収支と快適性に関する考察、日本建築学会大会学術講演梗概集、2007年8月、pp.589-590。

    本報その5.では、ラジコン棟・エアコン棟における環境物理量の測定値にもとづいて、人体のエクセルギー収支を求めた結果を述べた。ラジコン棟でもエアコン棟でも人体エクセルギー消費速さは2W/u前後であった。エアコン棟では、室内の相対湿度が下がると、人体エクセルギー消費速さが著しく大きくなる傾向があった。人体を出入りするエクセルギーのオーダーは0〜200mW/uであり、快適さはエクセルギー消費速さだけでなく、人体を対流・放射で出入りするエクセルギーのパターンによって決まると考えられる。

◆星野佳子・明石幸一郎・宿谷昌則:太陽熱を利用する住宅給湯の簡易予熱に関する実験研究−その1.実験概要とシステムのモデル化、日本建築学会大会学術講演梗概集、2007年8月、pp.615-616。

    建物の美観を損ねることのないような、低効率ではあるが簡易で設置しやすい太陽熱温水器で給湯温度よりは低いが市水温度よりは十分に高い温水を得ることは意味のあることと考えて、安価な材料を用いて素人でも製作・修理が可能な単純な構造の温水器を試作し、どの程度の温水温度が得られるかを実験によって確かめた。試作した温水器は集合住宅の屋上などに水平に設置できるものとした。夏の実験によると、得られる温度は50〜70℃となった。この温水温度を再現しえるような簡易なエネルギー収支モデルを作成し、数値解析を行なって、温水温度の値が計算によってほぼ再現しえることを確かめた。

◆明石幸一郎・星野佳子・宿谷昌則:太陽熱を利用する住宅給湯の簡易予熱に関する実験研究−その2.エクセルギー収支の考察、日本建築学会大会学術講演梗概集、2007年8月、pp.617-618。

    本報その2.ではエネルギー収支式に加えてエントロピー収支式を導き、これら二式に温水器の周囲環境温度(外気温)を組み合わせてエクセルギー収支式を導いた。給湯予熱システムのエクセルギー消費パターンを計算した結果、今回の実験で試作した温水器ではポンプへの投入エクセルギーが著しく大きくなることが明らかになった。また、簡易予熱によって得られる温エクセルギーは比較的小さいけれども、その小さな温エクセルギーの確保が、ガス給湯器への投入エクセルギーを著しく削減しえることを明らかにした。

◆M. Schweiker and M. Shukuya:Trial Analysis of User’s Interaction with Their Thermal Environment in Relation to Their Personal Background、日本建築学会大会学術講演梗概集、2007年8月、pp.503-504。

    本研究では、東京にある国際留学生会館における留学生室10室について、秋季の2週間について温熱環境の実測と、住まい方の聞き取り・質問紙調査、人体エクセルギー消費計算を行なった結果を述べた。実測を行なった室はすべて同じ大きさであるが、方位や階が異なる。また、そこに住む留学生の出身国も異なる。出身国の気候や文化などが留学生室の温熱環境づくり(エアコンをつけるか・窓を開けるかなど)にどのような影響があるかを考察した。その結果、温熱履歴がエアコンの使用や窓の開閉などの行動に影響しているらしいことが明らかになった。

◆宿谷昌則:自然エクセルギーの生成と移動にかんする考察、日本建築学会大会学術講演梗概集、2007年8月、pp.599-600。

    熱力学における考察の対象としてよく取り上げられるヒートポンプについて、その成り立ちを、エクセルギーの投入・消費・生成(生産)・移動の関係性に着目して改めて考察し直した結果を述べ、ついで、ヒートポンプを自然エクセルギー移動のためのアクティブシステム要素と捉えて、「低エクセルギー利用システム」の定性的なイメージを浮き彫りにするための考察を行なった。

◆T. Iwamatsu, Y. Hoshino, E. Kataoka, M. Shukuya, Exergetic Evaluation of High-Temperature Radiative Cooling Combined with Natural Ventilation、Proceedings of 2nd PALENC Conference and 28th AIVC Conference on Building Low-Energy Cooling and Advanced Ventilation Technologies in the 21st Century, 27th-29th of September 2007(Crete Island, Greece), pp.441-446.

    二つの木造小住宅実験棟を使って、一方に通常の対流式冷房、他方に放射冷房と通風の組み合わせを施し、実現される温熱環境について実測した結果を述べた。室内空間が保有する冷エクセルギーと乾エクセルギーは、前者で88J/・3と336J/・3、後者で14J/・3と8J/・3となった。これは後者では通風が行なわれているためである。放射冷房によって得られる冷放射エクセルギーは10〜80mW/uであり、快をもたらし得る冷放射エクセルギーの値として以前に明らかにされている値(20〜30mW/u)とほぼ同等だった。快の申告数は、放射冷房と通風を組み合わせて行なった場合が、放射冷房を締め切った空間で行なった場合よりもかなり多く、また対流式冷房の場合よりもむしろ多かった。

◆M. Schweiker, and M. Shukuya, User Behavior in Relation to His Short- and Long-term Thermal Background、Proceedings of 2nd PALENC Conference and 28th AIVC Conference on Building Low-Energy Cooling and Advanced Ventilation Technologies in the 21st Century, 27th-29th of September 2007(Crete Island, Greece), pp.913-918.

    東京にある留学生たちの住居となっている建物における室内温熱環境の実測を約10人分の居室について行ない、またこれら留学生の出身国における温熱環境の調整方法や温熱環境についての認識を調査した。得られた物理量データを用いて人体エクセルギー消費を計算して、その結果が窓の開閉やエアコン装置の入り切りとどのように関係するかを考察した。窓の開閉とエアコン装置の入り切りには過去数時間の温熱環境履歴が影響しているように思われ、また、出身国での温熱環境調整の方法が影響している様子が窺えた。

◆M. Shukuya, Exergy Concept and Its Application to the Built Environment, Proceedings of the 6th International Conference on Indoor Air Quality, Ventilation & Energy Conservation in Buildings (IAQVEC 2007), 28th-31st October 2007, Sendai, Japan, pp.1089-1096.

    この論文では、エクセルギー概念の短い紹介をまず行ない、次いで建築環境に関する最近のエクセルギー研究で明らかになってきた事柄を紹介した。エクセルギー概念は、エネルギーとエントロピーに加えて環境温度を組み込んだ概念であることを明示した。記述の対象とする系に対して環境を明確に定義して、系を出入りするエネルギーとエントロピーの収支式を導き、両者を組み合わせる際に環境温度を使うとエクセルギー収支式が導かれる。以上の考え方に基づいて行なってきた建築環境に関する一連の研究によると、室内空間などの系は環境との相対的な関係によって温エクセルギーあるいは冷エクセルギーを保有すること、通常のヒートポンプは温・冷エクセルギーの振り分け装置であること、夏の室内では放射冷エクセルギーの確保が重要であることなどを示した。

◆M. Shukuya, The Exergy Concept and Its Relations to Passive/Active Technologies and Renewable/Non-Renewable Energy Sources, IEA/ECBCS/Annex 49, Newsletter No.2, 2007, pp.5-7.

    建築環境を調整するための技術の「かた」にはパッシブ型とアクティブ型とがあり、両者の違いは根本的にどこにあるかを、熱力学の基本に立ち返って論じた。パッシブ型技術は建築外皮に穿つ開口部、あるいは柱と柱の間に生まれる空間(まど(間所)転じて窓)を必要に応じて開ける・閉める技術であり、気候風土(地域)性が著しく現われる技術である。一方、アクティブ型技術は火の利用を基本とした動力の生産とその利用による技術(ポンプ・ファン・電灯ほか)であり、地球上のどこでも・いつでも成り立つ技術である。これら技術の性質を知った上で、自然のポテンシャル(エクセルギー)を如何に利用していくべきかを論じた。

◆宿谷昌則:環境建築と共育、JIA環境行動委員会編:環境建築ガイドブック(コラム)、建築ジャーナル、2007年11月、p.236。

    建築家や建築(環境)学者とよばれる専門家たち(つくり手)と住まい手の間で交わされるべき言葉や、言葉を通じて共有されるべきイメージは残念ながら貧しいと言わざるを得ない。つくり手は(しばしば定義の曖昧な)専門用語を住まい手にむけて一方的に発し、住まい手は実質を伴わないイメージばかりを膨らませてしまう。“環境建築はデザインが悪い” そういう決まり文句があるけれども、この文句じたいが貧しさを現わしてはいないだろうか。“デザイン”は、注意して聞いてみると、多くの場合“見栄え”と同義である。見栄え(かたち)はもちろん大切だ。しかし、その奥に自然の流れや循環といった「かた」がなくては、ほんものの美しさや豊かさは現われない。「かたち」と「かた」の認識がつくり手のうちに重なり合うようになり、また、つくり手と住まい手の認識が重なり合うようになるような教育(共育)の必要性を指摘した。

 

東京都市大学 環境情報学部 ・大学院環境情報学研究科 宿谷昌則研究室

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