<ヘッダー>
<日付/時刻>
マスタ テキストの書式設定
2 レベル
3 レベル
4 レベル
5 レベル
<フッター>
<#>
これから、平成21年度、卒業研究発表を始めます。
タイトルは、HEPを応用した屋上緑化の評価手法の開発−生物多様性保全に着目して− です。
発表者の海老原です。
よろしくお願い致します。
まず、研究の背景と目的です。
現在の日本の都市域に代表される土地は、敷地内のわずかなスペースにしか緑地を確保する事ができず、野生生物のハビタット減少、ヒートアイランド現象といった問題が顕在化しています。こうした現状を改善するため、近年屋上緑化に関心が高まっています。 そのような中、今年、生物多様性条約第10回締約国会議が開催されることから、今後は屋上緑化の生物多様性保全機能についても捉えていく必要性があると考えます。
また、緑地の既存評価手法や、屋上緑化の生物多様性に関する評価はあるものの、生物多様性保全について共通の尺度で評価する手法は確立されていないのが現状です。 そこで本研究では、ハビタットを定量的に評価する手法である「HEP」を応用して、屋上緑化における生物多様性保全に着目した評価手法の開発を行うことを目的とします。
研究方法です。
まず、緑地における既存評価手法について文献調査を行い、既存評価手法の抜けや漏れを抽出します。 次に、本手法の開発を行うに当たり、文献調査と現地調査およびHEPの概念等を応用いたします。 最後に、完成した評価手法を用いて、都市域における既存屋上緑化の現地評価を行います。
研究結果です。
はじめに、本手法で用いられる用語の説明を致します。
まず、HEPとはハビタット評価手続きの略称であり、野生生物のハビタットとしての適否から、生態系をハビタット「質」、「空間」、「時間」という3つの異なる視点で主体という対象を定量的に評価する手続きで
次に「生物の多様性」とは、すべての生物の間の変異性をいうものであり、種内の多様性、種間の多様性及び生態系の多様性を含むとされています。
こちらは、緑地の既存評価手法における文献調査の結果です。
調査を行ったのは、SEGESJHEPCASBEEの3つです。
まず、SEGESでは、緑地に対して、地域生態系に配慮した保全、創出を行っているか否かを評価しています。 次に、JHEPは、HEPにおける概念を応用しており、ハビタット適性指数であるHSIデルと植生評価指数であるVEIを用いて緑地の定量評価をしています。 そして、CASBEEでは敷地内の生物の生息を支える生態環境の質について評価をしています。
しかし、これらの評価手法は、定性的な評価を行う手法であったり、評価方法が複雑であるため、生物多様性保全について共通の尺度で評価する手法は確立されていないのが現状です。
これらの事から、本手法では、屋上緑化地の土地所有者を評価対象者として、ハビタットを定量的に評価する事ができる「HEP」を応用し、屋上緑化の生物多様性保全に特化した定量的かつ簡易的に評価が行えるような手法を開発することとします。
次に、本評価手法の概要を示します。
本手法では、大きく3つの評価を行う事ができます。
まず、1つ目は、屋上緑化におけるハビタットの質的評価、2つ目は、空間スケールによる評価、3つ目は、屋上緑化地における時間的な評価が行えます。
また本手法は、各評価要素について有るか無いかの2択で判定を行います。
次ぎに省庁、地方自治体、企業を対象とした文献調査の結果を示します。
本手法における質的評価は、木本、草本、水辺の3つに分類をし、空間的評価では、街、敷地内、屋上緑化地の3つに分類をしました。
また、時間的評価では、屋上緑化地の計画、施工、管理の3段階に分類をしました。
また、赤丸がついている部分はCASBEEにおける評価を応用し抽出した項目です。
次に、都市域に生息する野生生物種の文献調査について示します。
評価対象種は、都市域に生息している鳥類、昆虫類の中から、人気種と屋上緑化における上位種を選定しました。
生息環境条件は、種ごとに文献を調査して評価項目を抽出しました。
次に、こちらは既存屋上緑化における簡易評価表です。
この表は、屋上緑化地の現地調査を行うために、文献調査の結果から作成をしました。
次に都市域における既存屋上緑化の現地調査の結果について示します。
現地調査は簡易評価表を用いて、既存屋上緑化40箇所を対象に調査しました。
そして、調査結果を踏まえて、簡易評価表の中の評価項目の修正を木本、水辺についてこちらに示すように修正しました。
次にHEPを応用した屋上緑化の評価手法の作成について示します。
本手法では、HEPにおける評価のフローの中にあるHEPアカウンティングの手順を取り入れています。
まず、HEPにおける主体は「評価種(evaluation species)」を示します。HEPは最初にこの評価種を選定することから始まります。 次に質を表す値は、SIで表され、0から1の全く不適から最適の範囲で表現されます。HSIという値は、複数のSI値を統合した値です。
空間を表す値は、 HUで表され、HSI値にその面積をかけたものです。
最後にTHUとは、評価区域における各HUの値を合計したものとなります。
次に、本手法における評価表について示します。
本手法における評価表は、土地所有者の計画、施工、管理に関する評価表、野生生物種の生息地に関する評価表、屋上緑化地の周辺環境に関する評価表の3枚で構成されています。
こちらは野生生物種の生息地に関する評価表の一部です。3枚の評価表の詳細な評価項目については、概要の2枚目をご参照下さい。
赤丸で示した部分がHEPアカウンティングにおける手順を応用した部分です。
次に、本評価手法における評価のステップを示します。
まず、評価手法における適用可能性調査では、噴出しに示す2つの判断基準が設けられています。
次に、評価区域の設定で、評価を行う屋上緑化地を決定します。
3つ目は、評価表による現地評価を行います。
評価方法は、目視による現地踏査を行い、HEPアカウンティングの算出手順にしたがって、SIHSIHU、総合評価得点であるTHUの算出まで行います。
最後に総合評価得点をランク表に従ってランク付けします。
最後に、評価手法を用いた既存屋上緑化地10箇所の現地調査について示します。
現地評価の結果、屋上緑化Aが67点と最も高い点数となり、屋上緑化Jが5点と最も低くなりました。 屋上緑化Aの点数が高い理由としては、屋上緑化地の面積が広く、立体的かつ水辺環境があり、周辺に海や森林があることが挙げられます。
最後に結論です。
橘らによると立体緑化に水辺環境を設けたビオトープ緑化が、生物多様性保全の機能を最も有しているとしています。 本手法における現地調査の結果、ビオトープ緑化が最も高い点数となり、次いで立体緑化、最後に平面緑化の順番になった事から 本手法が屋上緑化における生物多様性を評価する手法として実用性がある事がらかとなりました。
こちらが主要引用文献です。
以上で発表を終わります。ご静聴ありがとうございました。