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平成21年度卒業研究発表を始めます。タイトルは、親子のための環境教育教材製作、生物多様性オフセットを題材として、発表者は、田中研究室の今田聡美です。宜しくお願いします。
はじめに、研究の背景と目的です。
開発事業により失った自然を別の場所で復元し、定量的な価値を同等にする“生物多様性オフセット”、この概念は日本においても重要であり、普及させてゆく必要があるという背景から、
本研究では、分かりやすく生物多様性オフセットを説明し、幅広い年齢に対応できるよう絵本という形をとることで、子供をきっかけに大人も楽しむことができる教材の製作を行うことを目的としています。
次に、研究方法です。
本研究は、既存の文献やインターネットで現在日本に存在する環境絵本などの情報収集を行い、また、身近な自然に対する人々の考え方をアンケート調査するなどした結果をふまえて、絵本の製作を行いました。
次より、研究結果です。
研究結果より、実際に絵本の製作を行いました。内容は全30ページ、タイトルは“いきものたちのすみか”としています。
はじめに、読者対象を環境に興味や理解を持ち始めた小学生以上の子供から、その子供をきっかけにその親の大人も共に対象とし、登場するいきものには、物語の舞台になっている里山においてシンボルとして相応しいと考えた(何故?)ゲンジボタルを主人公に採用、その他にトンボ類や人間が登場します。
また、絵本のページは子供のために平仮名で書かれたストーリーの部分と大人のための補足説明部分が内容に合わせて同じページに配置された構成になっています。
絵本を通して伝えたいことです。
代償ミティゲーション=生物多様性オフセット
次からは、そのミティゲーションの優先順位に沿って絵本のストーリーを簡単にお話させて頂きます。
1. ある里山で暮らす主人公のゲンジボタルが、一匹のシオカラトンボと出会うところから話は始まります。川の下流に暮らしていたそのトンボは、開発事業で“すみか”を無くしたと話します。
2. シオカラトンボと別れると、友達のオニヤンマが現れ、自分たちの“すみか”周辺にも開発の話が持ち上がっていると主人公に話します。話を聞いた主人公のゲンジボタルは心配になり、自分たちの“すみか”を守るための方法を仲間たちと考え始め、そこで、まずは開発を止めることができないか人間に提案することを決めます。
3.ホタルたちは開発の中止を求めますが、人間は自分たちの“すみか”を作ることが重要で、里山には貴重な生物種が存在せず土地を守る必要が無いと主張し、ホタルたちを追い払ってしまいます。
4.逃げ帰ったホタルたちは、負けずに再び会議を開き、今度は人間に開発の延期を求めますが、人間は自分たちの“すみか”が今必要なのであり、延期する必要が無いとまたもホタルたちを追い払ってしまいます。
5.ホタルたちは、まだまだ負けずに会議を開き、今度は開発の場所を代えることを求めますが、人間は、他に“すみか”づくりができそうな場所は無いと、またもホタルたちを追い払ってしまいます。
6.三回目も追い払われ、ホタルたちもくじけますが、主人公のゲンジボタルに説得され、再び人間と話し合いを行うことを決めます。再び行われた話合いの中で、あるゲンジボタルが全面的に開発させるのではなく自然も残してもらおうと提案します。
7.その案に賛成したホタルたちは改めて人間のところへ向かいます。人間は、ホタルたちがあまりにしつこいので、仕方なく自然に配慮することを約束し、ゲンジボタルたちも期待をします。
8.人間とのやりとりから少し経ち、主人公のゲンジボタルは以前会ったシオカラトンボと再び出会います。そこに友達のオニヤンマも合流し、人間の配慮の結果、開発が一部縮小され、トンボたちの“すみか”周辺の自然は何とか残り、ホタルたちの“すみか”は開発を免れることができなかったという話を聞きます。
9.話を聞いたゲンジボタルは、“すみか”が残らないことにがっかりしますが、再び考え直し人間に自分たちの“すみか”のことをもっと考えてもらおうと思案し始めます。そこで、ひとつ良い案を思いつき、仲間たちに話します。主人公のゲンジボタルが提案したのは、人間の“すみか”をつくる代わりに自分たちの“すみか”も新しく作ってもらおうというもので、仲間のホタルたちも良い案だと皆賛成し、改めて人間のところへ向かいます。
10.人間は、配慮は充分行ったとホタルたちを追い払おうとしますが、ホタルたちが帰ろうとしないので、スプレーを持ち出して追い払おうとします。
11.そこに、開発の噂を聞きつけてやってきた自然の保全団体の人間が現れ、弱いものを苛めるのはやめるように言います。その新しくやってきた人間に、ゲンジボタルは再度“すみか”をつくってくれるようお願いすると、保全団体の人間はちゃんと考えることを約束します。
12.一度ホタルたちを帰した後、事業者と保全団体の人間たちは話し合いを始めます。両者はホタルの“すみか”を代償することを決め、自然復元などの作業や管理は保全団体が行い、費用は事業者が出すというように協力することを約束しました。
13.それからもっと時が経ち、主人公のゲンジボタルの子供が代償された土地で大人になる準備をしていました。
14.大人になったゲンジボタルは、ある日一匹のシオカラトンボに出会いました。そのトンボは人間による開発の中で残された自然に暮らしていましたが、その自然も次第に減ってゆき、結局“すみか”と仲間を無くしてしまったと言います。それを聞いたゲンジボタルは、代償された土地はとても暮らしやすいことを話します。
同じ頃、土地を代償した事業者と保全団体の人間は、協力してできた土地に満足しているとお互いに話をし、〜最終的に、人間にもホタルにも良い結果となったところで話が終わります。
最後に結論と考察です。
絵本の作成による効果は、絵による視覚効果と専門用語の少ない物語によって、生物多様性オフセットのような一般にあまり知られていないような内容でも、より身近に感じることができるようになる点ではないかと考えられます。
自然環境を守ってゆくための様々な方法・概念をより一般に広げるためには一層努力が必要であり、本研究で作成した絵本も、沢山の人に読んでもらい、意見や感想を検証することで生物多様性オフセットの認知に貢献できると考えます。
以上が引用文献になります。ありがとうございました。