☆相模湖流域における窒素・リンの循環

研究背景: 相模湖は1947年できた人造湖であり、神奈川県の主な水道水源である。しかし、相模湖は、アオコが異常に多く発生し、長年富栄養化の問題に直面しており、水生水物に及ぼす影響、水質低下などが懸念されている。富栄養化は、一般に過剰な窒素・リンの量が存在した場合、生じる現象である。本研究では、相模湖と森林集水域における窒素循環を定量的に調べて窒素負荷量を削減できる対策を見出す。 

☆相模湖流域の森林集水域における窒素の収支
相模湖流域における窒素負荷量は、約70%森林集水域(水源林)由来であると推定されている。本研究では、相模湖の水源林にあたる嵐山の森林集水域で、2004年10月から、林外雨(窒素の流入量=大気由来の窒素の負荷量)、渓流水(窒素の流出量)、相模湖水、地下水を採取し、富栄養化の主な原因と考えられる窒素をモニタリングしている。窒素の収支は、流入量から流出量を差し引いて求めた値であり、この値から森林における窒素の飽和度を評価することができる。

☆相模湖流域における窒素源

相模湖付近の森林集水域における大気由来の窒素負荷を量だけではなく、窒素の化学種を分別している。窒素の化学種には、溶存無機態窒素(Dissolved Inorganic Nitrogen: DIN)として硝酸態窒素(NO3−)、アンモニウム態窒素(NH4+)、亜硝酸態窒素(NO2−)を分別測定し、溶存有機態窒素(Dissolved Organic Nitrogen: DON)は溶存態全窒素(Total Dissolved Nitrogen: TDN)から溶存無機態窒素を差し引いて求めている。一般に硝酸・亜硝酸態窒素は化石燃料の燃焼から由来したものであり、アンモニウム態窒素は農業活動(特に畜産)から由来したものが多い割合を占めている。有機態窒素のデータは、無機態窒素と比べて少なく今後十分な分析と解析を通して考察したい。

 

<上の写真: 2006年4月、相模湖流域の景色>

 

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<上の写真: 相模湖流域の森林集水域の調査とサンプリング>

☆森林集水域とは、降った雨が林冠(Canopy)、林床、土壌を経由して渓流水に流れ込む面積の範囲のことを言う。一般に窒素は大気から湿性沈着物(雨、霧など)と乾性沈着物(ガス、エアロゾル、粒子など)と共に森林集水域に沈着する。そして、林冠、林床、土壌を経由して、その森林集水域の渓流水に流れていく。この循環の過程から動物・植物にとって欠かせない窒素という植物3大栄養素の一つをとることができる。しかし、動力源をうまく使えるようになった産業革命以来、石炭、石油、天然ガスの使用の増加と共に大気中の窒素酸化物(一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)など)が増えつつあり、森林集水域においても増加した窒素負荷量が長期間に渡って影響を与えてきたと考えられる。なお、人口の増加は、食糧問題と共に面積あたりの作物の生産量を高めるための窒素施肥量の増加を引き起こしてきた。生態系における窒素循環は、水、大気、土壌系、それぞれの系に限られているものでなく、そのすべての系が一つの生態系を構成しているために互いに深く関係している。森林集水域では、土壌と植物が持つ窒素の量が過剰になった場合、渓流水と共に森林集水域から多くの窒素が流出される。本研究では、窒素収支を森林集水域における窒素飽和度を評価する一つの方法として用いる。相模川流域の中流に位置している人造湖である相模湖は富栄養化になっている。相模湖における富栄養化の主な原因は過剰な窒素負荷量である可能性があることに着目し、森林集水域の窒素飽和度について検討する。

chalie僕をクリックするとこの森林集水域の気温と渓流水の水温が詳しく分かるよ。

chalie僕をクリックするとこの森林集水域における窒素の形態が詳しく分かるよ。

 

<上の写真: サンプリングおよびオンサイトpH・EC分析>

 

<上の写真: 室内実験、分析化学>

<以下他の写真>