(2) 東京都の多摩川における水質分析

 

(研究概要)

多摩川流域の下水普及率は、1971年には約20%であったが、2004年には約95%にまで飛躍的に増加した。それに伴い、多摩川の田園調布堰上の水質が年平均BOD(生物化学的酸素消費量:有機汚染の指標、行政の代表的な河川の水質指標)値として1971年の約11mg/Lから2004年には約2mg/Lにまで改善された(東京都環境局)(図1)。しかし、長年水質指標、衛生学的指標、生物学的指標として用いられてきた大腸菌群数は未だに改善されていない(図2)。大腸菌群数とは、大腸菌及び大腸菌と性質が似ている細菌の数のことを言い、屎尿汚染の指標として使われている。河川での大腸菌群数の環境基準値は類型別に定められており、「50MPN/100mL以下」~「5000MPN/100mL以下」となっている。なお、東京都の人口は年々増加しつつあり、人畜由来の糞便性大腸菌の河川への流入が懸念されている。本研究は、東京都に位置している多摩川の上流、中流、下流、支流において大腸菌群数と糞便性大腸菌群数を分析した(図3、図4)。多摩川における大腸菌群数と糞便性大腸菌群数はいずれも下流ほど高く基準値を超過していた(図5)。

 

図1.多摩川の水質経年変化 (データ:東京都環境局)。BOD75%値:年間の日間平均値の全データをその値の小さいものから順に並べ0.75×n番目(n は日間平均値のデータ数)のデータ数をもって75%水質値とする。環境基準点の75%以上のデータが基準値を満足している場合は、環境基準適合と判断する。

 

 

 

図3.多摩川の各調査地点における河川の環境基準値を超過した大腸菌群数の割合(st7:未処理下水、st8:処理下水)

 

図4.多摩川の各調査地点における水浴場の水質判定基準値を超過した糞便性大腸菌群数の割合(st7:未処理下水、st8:処理下水)

 

図5.多摩川における大腸菌群数と糞便性大腸菌群数(点線:生活環境の保全に関する環境基準(河川):大腸菌群数5000MPN/100mL以下、水浴場水質判定基準:糞便性大腸菌群数1000MPN/100mL以下、st7:未処理下水、st8:処理下水)

 

用語定義:
1)cfu:colony forming unitの略字で大腸菌群数を表す一つの単位、平板培養で出てきた「コロニーの数」を数えた分析値。
2)MPN:most probable numberの略字で大腸菌群数を表す一つの単位(行政で使用)、日本語は「最確数」、培養後のコロニーの数を確率として統計学的に表した分析値。
※ 分析方法が異なるために分析値に差がつく可能性はあるが、通常「cfu≒MPN:☞コロニー数(個)」と考えて良いとの見解もある。他の分析でも、分析方法が複数である場合、同じ試水で同じ分析項目にもかかわらず、異なる分析値が報告されている。例えば、COD(化学的酸素消費量)分析の場合、代表的に二クロム酸カリウム法と過マンガン酸カリウム法が両方用いられており、いずれの分析値も通常認められているが、この分析方法の違いによって同じ試水にもかかわらず分析値が異なる場合もある(参考に日本では主に過マンガン酸カリウム法が用いられている)。なお、異なる分析方法による異なる分析値については、長年議論が続いているが、このことも分析化学の発展のためには大事な一つの過程であろう。

 

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